司馬遼太郎の「翔ぶが如く」の文庫本第二巻を読み終えた。面白い。実に面白い。維新後の明治国家と旧薩摩藩の対比、その中で蠢く人物像に魅せられる。人斬り半次郎こと桐野利秋に興味を覚えた。幕末は暗殺者として名高く、すれ違いざまに一刀両断でけりを付けた。斬るのが商売のサムライにわざわざ「人斬り」と綽名される程、幕府方の人間を斬った。桐野が刀を引き寄せ、柄を弄び始めたら、同席する人間は生きた心地がしなかったという。明治の新政府では陸軍少将を務め、あいも変わらず西郷隆盛の個人的用心棒まで勤める剛毅な薩摩郷士で、明朗磊落な桐野が居るだけで座が華やいだと言う。「桐野に字があれば(学問があれば)、天下を取った」と西郷に言わしめた最も颯爽とした薩摩武士で京都でも東京でも芸者、芸子が争って桐野の席に出たがったと言う。